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「----おい」
怒気の含まれた低い声が、翼の耳に入った。
その声に反応して、無意識のうちに俯いていた顔を上げると
案の定、土方が眉を寄せてこちらを軽く睨んでいた。
「え、あ、何ですか?」
翼の口から、思っていた以上に気の抜けた声が出る。
その返事を聞いた土方は更に顔をしかめ、
露骨に深いため息をついた。
………そんな露骨にため息つかなくても…。
なんか、いたたまれない雰囲気………。
嫌みったらしいため息に、翼は少しムッとする。
「…考えこんだり、顔をムッとする暇があるなら、手を動かせ。」
寝る時間なくなるぞ、
と軽く一喝する土方。
まるで翼の思考や表情をいとも簡単にを読み取ったかのような言い草だ。
翼は、恥ずかしい気持ちと怒りたい気持ちが入り混じったが、
頭の中で自然と土方の言葉を復唱しているとあることに気付き、下を向く。
「……………あ。」
動かしていると思っていた右手が、
土方の違和感を考えこんでいたせいで、いつの間にか止まっていた。
なるほど……と、土方の態度に納得した翼は、
再び手を動かそうとした。
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