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その隙に、沖田が土方に近付く。
「何言おうとしてたんですか?」
「………盗み聞きか。」
「盗み聞きなんて、人が悪いですねぇ。
ただ、偶然聞こえただけですよ。」
「は、偶然か。
それにしては、戻ってくんのが遅かったじゃねぇか。」
「そうですか?
こんなもんですよ。」
ふふっと妖しく笑う沖田に、土方はチッと舌打ちをして視線をそらした。
「…で、何を言おうとしたんですか?」
再び核心をつく沖田。
「別に---」
「ごまかしても無駄ですよ。
お酒を飲まない理由あたりから聞いてましたから。」
別に何でもない、とごまかそうとした土方に
沖田は着実に釘をさす。
…やっぱり盗み聞きしてたんじゃねぇか。
盗み聞きをしていた沖田と、それに気付かなかった自分に苛立ちながら、
土方は口を開いた。
「俺はそいつとは違う。
過去と現在を重ねるな。
………そう言おうとしただけだ。」
「……………」
土方の口から放たれた
感傷的なその声と聞き慣れた言葉に、
沖田は口を閉ざした。
---いや、閉ざざるおえなかった。
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