[温]

4/21
前へ
/54ページ
次へ
「はい?」 ぴったり3回のコールの後、電話口に女の人が出た。 「っ!私‥香波っ」 「どうしたの?」 驚いた様子のない夏海の口調。 やっぱりこのメモを入れたのは夏海だったんだ。 「逢いたい‥」 自然と唇から零れた言葉。 それは1ヶ月間必死に忘れようとしていた想い。 1ヶ月間切実に願い続けた本心。 夏海への想いが、熱を帯びていく。 忘れることなんてできなかった。 消してしまうことなんて無理だった。 けれど次の夏海の言葉に、冷水を浴びせられたような気がした。 「…待ち合わせの相手はいいの?」
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

234人が本棚に入れています
本棚に追加