[温]

11/21
前へ
/54ページ
次へ
「…へ?」 思考が追い付かない。 溢れかけた涙は引っ込み、思わず真海を凝視してしまう。 「あたし元は男なんだ。体はね?」 信じられないと言う顔の私に、ほら、と真海差し出したもの。 「免許証…」 【橘真海 男】 真海から受け取って見たそれには、確かに目の前の女の子の写真と、性別欄に【男】の文字。 「……」 驚きすぎて声も出なかった。 じっと手元の免許証を凝視する私に、更に真海が差し出す。 「これ、お姉ちゃんの社員証。忘れちゃったって言うから、今から届けるとこだったの」 【橘夏海】 確かに真海と同じ名字。 写真は夏海の顔だった。 「じゃあ…本当に兄弟…?」 まだ信じられない、と発した言葉も、真海は当然とばかりに頷く。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

234人が本棚に入れています
本棚に追加