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俺は1人綺麗な夕日を見ながら、店を開く準備をしていた。
小さな小さな食堂。
開店するのは、俺の気分次第、閉店するのも俺の気分次第。
本当に趣味でやっている様なお店だ。
いつもお客さんは1人来るか来ないか。
自分的にはいい木の香りがする良いお店だと思うんだけどね~
自分のお店だからという贔屓目を抜いても、狭い事を除けば良いお店のはずなんだけど……
「シェフの俺に問題があるのか、それとも気分次第でしか開けない事に問題があるのか……」
分かりきった答えを1人呟き笑う。
今日はお客さん来そうに無いな……
俺は一体何したら良いんだろうな~1枚板の自慢のカウンターを見つめながらそう思っていると、ゆっくりと店のドアが開いた音がした。
俺は顔を上げて、入ってきたお客さんを見ると女子学生だった。
しかも見た事のある女子学生。
つり上がったオレンジ色の瞳。
肩までの長さに切られたショートカットの瞳と同じ色の髪。
俺の通ってる学校でいつも俺の下、2位の確か名前はミルシアでしたっけ?
するとミルシアはため息をつきながらカウンターの下から椅子を引っ張り出すと、腰をかけた。
「いらっしゃいませ」
「ああ、適当に食べさせてもらえないか?」
俺が挨拶すると彼女は少し表情を曇らせながらそう言った。
俺は料理を作りながら彼女に尋ねる。
「お客様、どうかしたんですか?
表情が暗いですよ~」
「ああ、聞いてくれないか?実はな・・・」
彼女がそこまで言って俺の方を見たところで、一瞬動きが止まった。
その表情は驚きに満ちていた。
「わ、若くないか?」
「そんな事ですか~
よくお客様に同じ事を言われます」
俺はそう笑いながら言うと、彼女は「そうか」と小さく呟いた。
そんな彼女に俺は何を先程言いかけたのか尋ねてみた。
すると彼女は遠慮しがちにゆっくりと口を開いた。
「実はな、学校でいつもテストで負けてしまう奴が居るんだ。
今回こそは勝てたと思ったのだが……
後1歩の所でそいつに届かなかったのだ」
彼女は悔しそうにカウンターの上に置い手居た拳を握りしめた。
あ~、多分そいつは俺のことかな~
なんて実は少し嬉しい気持ちで聞いてたりする。
俺の後をこの人は追いかけてくれている。
多分皆諦めただろうと思っていたのに、まだ俺の事を……
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