君の隣で

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「ちょっと待ってて。」 優しい眼差しで赤城城先輩が微笑んでくれた。 「ヒャッ、」 突然首元に冷たいものを感じる。 「ハハッ」 振り向くと、 赤城先輩がアップルジュースを片手に、 悪戯っぽく笑っていた。 「意地悪。」 ちょっとほっぺを膨らませて怒って見せた。 そんな私に赤城先輩は、缶のフタを開けてジュースを手渡してくれた。 一口飲んだところで気付く。 「あっ、先輩の分は?」 「小銭足りなかった。しかも釣銭切れ。」 少しためらいながらも、 飲みかけのジュースを差し出した。 「俺はいいよ。気にすんな。」 遠慮なのか、照れなのか。 でも、 「もう遅いですよ。」 「えっ?」 「気にしないなんて無理。気になるんです。」 もう、先輩の全てが気になるんです。 「サンキュー。」 赤城先輩は、私の手からジュースを取ると、一気に半分位飲み干し、再び私に差し出した。 「……ありがと。」 続けて私も一口。 何だか赤城先輩の強い視線を感じて、 顔が赤くなっている自分に恥ずかしくなる。 それを悟られたくなくて話題を探す。 「そういえば、どんな人だったんですか? 前の彼女って。」 「彼女?」 「別れるって言ってた人。」 「ああ、あれは嘘。彼女なんていなかったよ。」 「えっ!」 どういう事? 「だってやっぱりマズイだろ。 木下にちゃんと了解得ないとさ。」 また新たな一面を見た気がした。 「そしたらアイツ、 とんでもない条件出して来てさ。」 「条件って?」 本当は、知ってるけど…… 「くだらない事さ。 でも、アイツもただでは引き下がれ無かったんだろ。 言ってる先から本気じゃ無かったさ。」 屋上で見た木下先輩の笑顔。 あの緊迫した空気の中で私を気遣かってくれた。 木下先輩は、 私たちを応援してくれていたのかも。 相模先輩の事があってから赤城先輩は、 私との距離を置き始めてたから、 だから、木下先輩は赤城先輩の背中を押すつもりで、あの時、あの話しを持ち出したんだ。 「ホント、良い奴だよ、木下は。」 うん、分かる気がする。 相模先輩とも、いつかこんな風に、 分かり会えたら良いのにね。
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