君の隣で

11/15
前へ
/187ページ
次へ
それからの私たちは、学校の事とか、友達の事とか、好きなアニメやテレビ番組の話しとか、 たわいもない話しをしながら歩き続けた。 そして、私の家の前までたどり着く。 もう少し一緒に…… そんな思いをこらえて、 「じゃあ、また。」 そんな私に、 「またね。」 「ありがとうございました。」には、 「どういたしまして。」 「明日、学校で。」には、 「明日ね。」 「おやすみなさい。」には、 鼻でクスッと笑われた。 もっと一緒に居たいと思う気持ちがばれちゃった? 先輩が右手を差し出して来た。 えっ? 「切りがなさそうだから。」 顔が赤くなる。 差し出されたままの手を、 私はどうしたらいい? 「握手で終わろ。」 ドキドキしながら、おどおどと手を差し出す。 その手を赤城先輩が勢い良く握る。 目が合ったところで、 更にギュッと力強く握り閉められる。 「痛っ。」 顔を歪めた私に、『ハハッ。』と、笑う。 一瞬、力が抜けた私の手をサッと離すと 「じゃっ、」 と、とびきりの笑顔で2、3度右手を振り、 そのまま、振り向く事無く走り去っていった。 その後、当然私は母や父に怒られた。 病院で連絡は入れていたけど、 さすがに9時は遅すぎた。 赤城先輩に送られて来たのも見られている。 赤城先輩はどういう人かとか、 どういう関係かとか、 尋問はしばらく続き、 解放されたのは11時だった。 でも私は、こんな自分が幸せに思えた。 病院で初めて赤城先輩のお父さんに会ったけど、お父さんは私の存在を最後まで気にし無かった。 私に興味が無いというより、 赤城先輩に関心が無いというか…… そんなお父さんに、軽い会釈はしたものの、挨拶はためらってしまった。 お父さんは、赤城先輩が医者にさえなってくれればいいのだろうか? それとも、あの緊迫した状況がそうさせてしまっただけなのだろうか? ------ 相変わらずだな。 赤城先輩の呟きが耳に残る。 私は、赤城先輩ともっと分かり合いたい。 たくさん話しがしたい。 大切だと思える人だから。 お父さんにとって、赤城先輩や相模先輩は、 大切な人じゃないのかな? 二人のお母さんたちだって、一度は大切に思った人たちなんですよねぇ。
/187ページ

最初のコメントを投稿しよう!

364人が本棚に入れています
本棚に追加