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それからの私たちは、学校の事とか、友達の事とか、好きなアニメやテレビ番組の話しとか、
たわいもない話しをしながら歩き続けた。
そして、私の家の前までたどり着く。
もう少し一緒に……
そんな思いをこらえて、
「じゃあ、また。」
そんな私に、
「またね。」
「ありがとうございました。」には、
「どういたしまして。」
「明日、学校で。」には、
「明日ね。」
「おやすみなさい。」には、
鼻でクスッと笑われた。
もっと一緒に居たいと思う気持ちがばれちゃった?
先輩が右手を差し出して来た。
えっ?
「切りがなさそうだから。」
顔が赤くなる。
差し出されたままの手を、
私はどうしたらいい?
「握手で終わろ。」
ドキドキしながら、おどおどと手を差し出す。
その手を赤城先輩が勢い良く握る。
目が合ったところで、
更にギュッと力強く握り閉められる。
「痛っ。」
顔を歪めた私に、『ハハッ。』と、笑う。
一瞬、力が抜けた私の手をサッと離すと
「じゃっ、」
と、とびきりの笑顔で2、3度右手を振り、
そのまま、振り向く事無く走り去っていった。
その後、当然私は母や父に怒られた。
病院で連絡は入れていたけど、
さすがに9時は遅すぎた。
赤城先輩に送られて来たのも見られている。
赤城先輩はどういう人かとか、
どういう関係かとか、
尋問はしばらく続き、
解放されたのは11時だった。
でも私は、こんな自分が幸せに思えた。
病院で初めて赤城先輩のお父さんに会ったけど、お父さんは私の存在を最後まで気にし無かった。
私に興味が無いというより、
赤城先輩に関心が無いというか……
そんなお父さんに、軽い会釈はしたものの、挨拶はためらってしまった。
お父さんは、赤城先輩が医者にさえなってくれればいいのだろうか?
それとも、あの緊迫した状況がそうさせてしまっただけなのだろうか?
------ 相変わらずだな。
赤城先輩の呟きが耳に残る。
私は、赤城先輩ともっと分かり合いたい。
たくさん話しがしたい。
大切だと思える人だから。
お父さんにとって、赤城先輩や相模先輩は、
大切な人じゃないのかな?
二人のお母さんたちだって、一度は大切に思った人たちなんですよねぇ。
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