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------明日ね。
昨日確かにそう言ったのに、学校に赤城先輩の姿が無かった。
自然に校舎の屋上へと足が向いた。
でも、そこにいたのは相模先輩。
目が合ってしまう。
相模先輩は、屋上に張られた手すりに
背中をつけてもたれ掛かっていたが、
私と目が合った後は、クルリと向きを変え
手すりに両肘をかけて、グランドを眺めた。
向きを変える時、微笑んだ様にも、睨みつけられた様にも見えたが、
私は、二人分位の間隔を空けて相模先輩の横に立った。
「考えてくれた?」
しばらくの沈黙の後、落ち着いた口調で相模先輩が言った。
…………
返す言葉に戸惑った。
相模先輩は、私の初恋。
三年も憧れ続けた人。
でも、
「赤城が好き?」
コクリと頷く。
そして、
「好きです。」
三ヶ月前にも、相模先輩の前で同じセリフを言ったけ。
------好きです。
三年間もずっと好きだったのに、
こんなに急に、人の気持ちって変わるものだったのかな?
私がおかしいのかな?
三ヶ月前の私なら、考えられない事だよね。
「そっか。」
そう言う相模先輩の目が優し過ぎる。
ううん、悲しすぎる。
「俺は間違ってたのかもしれない。」
相模先輩の表情が曇る。
「間違ってたって?」
「赤城のおふくろさんは、愛人なんかじゃ無かったのかもしれない。」
えっ?
「俺の母さんと父さんは見合いだった。
体の弱い赤城のおふくろさんは、見合いの話しを知って、身を引いたんじゃ無いかって、
父さんは、三年前に初めて赤城の存在を知ったんだ。」
赤城先輩のお母さんからの連絡で知ったって事なのかな?
だとしたらお父さんは、赤城先輩とお母さんを見捨てた訳じゃなかったのかも。
医者になる条件だって、赤城先輩のお母さんが望んで頼んだ事なのかも。
「お父さんに何か聞いたんですか?」
「昨日病院で父さんに会った。
呼び出されたんだ。父さんは、
『母さんとは、お世話になった人からの見合い話しで知り合った。』としか言わなかった。
それと、『弁護士を本気で目指すなら、主観にとらわれるな。』ともね。」
相模先輩は更に、
「病院では、赤城のおふくろさんの病室にも行った。話しはしてないけど。」
「そうですか。」
「それから、」
相模先輩が私を見る。
「赤城に寄り添う……君も見た。」
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