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「30秒でいい、抱きしめてもいいかな?」
相模先輩はそう言い終わる前に、
私は返事をする暇さえ与えられずに、
抱きしめられた。
「何やってんだよ!」
相模先輩は突然強い力に肩を掴まれ、
そのまま左頬を殴られて、
冷たいコンクリートの地面に倒れた。
「木下先輩っ!」
木下先輩だった。
木下先輩は、倒れ込んだまま左頬を抑える相模先輩の胸倉を両手で掴み、
「赤城のおふくろさんが死んだってのに
何やってんだよ!
赤城の女に手ぇ出してんじゃねぇよ!!」
死んだ?
赤城先輩のお母さんが……亡くなった?
嘘、だって昨日……
木下先輩が再び握った拳を、
私は必死で掴んで止めた。
「赤城先輩に
……逢いたい。」
三人の時が止まった。
そして走り出していた。
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