私の中のアイツ

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「何?」 ん!? 今、佐々木喋った? 佐々木を見るが、席に着いたまま変わらず本に目を通している。 一人言? 本に話しかけてる? 「だから何?」 今度は本から視線を離し、しっかり私を見て佐々木が言った。 私? 「何って何?」 何なんだこの会話? 「さっきからすっごい視線感じるんだけど、何?」 うわっ、気付かれてた。 注目される事に馴れている風見くんと違って、佐々木はたった一人の視線にも敏感なんだ。 「べ、別に佐々木を見てた訳じゃ無くて、 ほ、本を見てたんだよ。 どんな本なのか気になったから……」 適当に取り繕うが、佐々木はそれを許さない。 「本の内容が気になるの?  それとも、どんな本を読んでるかが気になるの?」  ………… えっ! 何、それ、 感づいている? 何か、感づいちゃってる? フフッ、 返事に口ごもる私を 佐々木が鼻先で笑う。 「小谷って分かりやすいな。」 小谷サキは私の名前。 でも、今はそんな事どうでもいい。 佐々木は読んでいた本をパタンと閉じると私に向かって差し出した。 「貸してやるよ。 【相対性理論における矛盾点の解明】についての本だけど。」 「いや、遠慮しとくよ。」 そんな、題名だけで頭おかしくなりそうな本なんて。 しかし佐々木は席を立ち上がり、 左手で通学バックを肩にかけ、 私の目の前までくると、 右手に持った相対何とかの本を 私の胸に押し付けた。 「だって気になるんでしょ? ってか、好きなんでしょ?」 佐々木は馴れない笑顔で「じゃあ、」と教室から出て行ってしまった。 相対何とかの本を私に残して……
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