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「意外に面白いかも。」
私はいつの間にか、1ページ、また1ページとそのコミックを読み進めていた。
「あっ、もうこんな時間。」
読み終えた時、校内の施錠時間まで
後10分程に迫っていた。
「まだ、居るのかな?」
私の足は自然と図書室に向いていた。
「あっ!」
「危ない!」
三階に向かう階段の踊場で、上から降りて来た風見くんとぶつかりそうになる。
ふらついた私は、風見くんに素早く支えられる。
「ごめんなさい。」
「大丈夫?」
「うん、ありがとう。」
その時、手に持っていたあのコミックが床に落ちた事に気付き、慌てて拾おうと腰を曲げ手を伸ばすと、同じく手を伸ばした風見くんの手と触れ合い、
同時に私と風見くんの頭と頭がぶつかった。
「イテッ、」
「イタイ、」
「ゴメン。」
「ごめんね。」
私達は顔を見合わすと、
お互いに頭を抑えながら笑った。
その様子を階段の上から佐々木が見ていた。
「お前、何処行ってたんだよ!」
「トイレだけど。」
やっぱり図書室以外はトイレなんだ。
部活を終えた風見くんは、図書室に佐々木を迎えに行ったが、そこに佐々木の姿が無く、もう帰ってしまったのかと慌てて階段を駆け降りていたらしい。
『施錠します。
校内に残っている生徒は――――』
校内放送が流れ出した。
私達は階段を駆け降りた。
今度は慌てながらも慎重に。
校門を出たところで、
私は佐々木にコミックを差し出した。
「はい、相対性理論。」
少し嫌みを加えてやった。
「勉強になった?」
よくもしゃあしゃあと。
「なったよ。異次元生物との共存の難しさについてね。」
この時の異次元生物とは佐々木の事。
本人には、通じて無いかもしれないけどね。
「良かった。でも、俺はもういいよ。」
ん? どういう事?
「それってもしかして俺の?」
そう言ったのは風見くん。
えっ! これ、風見くんのなの!?
佐々木が私に向かってニヤッと笑う。
ちょっ、ちょっと、本人の了解無しに、
又貸し止めてよね!!
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