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「小谷、戦闘もの好きだったんだ。」
私を見て、風見くんが意外そうに言った。
戦闘ものって、せめてSFファンタジーって言ってよ。
「あっ、うん、まぁ、たまにはね。」
読み切ってしまったからには否定出来ない。
「どうだった?」
「面白、かったよ。」
って言うしかないよね。
「だろっ! 男のロマンだよな?」
お、女なんですけど……
でも、まっ、いいか。
風見くんの少年っぽい笑顔にそう思えた。
つられてこっちまで少女の笑顔になる。
私の様子に、佐々木がまたニヤけている。
何なのよ!!
「洋介はもう読まなくていいのか?」
部外者の様な態度の佐々木に、風見くんが尋ねた。
「俺は現実主義だからね。
非現実世界には夢も何も感じない。」
佐々木らしい台詞だと、妙に納得してしまった。
佐々木には、数学や物理の様な
答えが決まっているものしか信じない雰囲気がある。
甲子園を夢見る風見くんとは、明らかに違う生物だ。
でも、そんな佐々木が……気になってしまうのだ。
あんたは一体、何者? ってね。
「シラケる事言うなよ。
じゃあ次こそは、洋介の気に入りそうなのピックアップしとくよ。」
風見くんが私の手からコミックを抜き取った。
そこで会話がちょっと途切れたから、
私が話題を作って見た。
風見くんとは中学も違うし、高校でも同じクラスになった事がない。
佐々木とは同じクラスになってまだ一ヶ月。
風見くんと佐々木は元々仲良し。
どう見ても、このスリーショットでの部外者は私。
会話が途切れたら、自分の居場所に困る。
「佐々木も本ばっか読んでないで、野球とかすればいいのに。」
しかし私の発したこの言葉が、より静寂を促してしまった。
な、何?
私、何か変な事言っちゃった?
「わ、分かった。佐々木すっごい運動音痴なんだ。」
ドツボにはまっていく。
考えてみたら、佐々木はよく体育の授業を見学することがある。
運動苦手なのかと思った事もあったけど、マット運動や鉄棒をやっている姿は
器械体操の選手を思わせたし、
体力測定もずば抜けていた気がする。
ホントにコイツは一体、何者?
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