君の隣で

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赤城先輩の部屋で一人、急に不安になる。 授業にもまともに出ていない人が、 テスト勉強なんて…… 私、こんなとこまで着いて来ちゃった。 カチャッ と、背後でドアの開く音にビクッとする。 「なぁ、好き? オレ―――」 言葉と共に、 不意に後ろから肩に手を掛けられる。 「嫌っ!!」 ガシャン その手を思いっきり振り払うと同時に、 赤城先輩の手からコップが落ち、 床に割れたコップのガラス片と オレンジジュースが散らばった。 「あっ、」 咄嗟にガラス片を拾おうとする私の手を、今度は赤城先輩が振り払う。 「危ない。ケガするぞ。」 そう言ってガラス片を拾う赤城先輩の姿に、思わず涙が溢れる。 赤城先輩は、そんな私の涙を親指でそっと拭うと、 「そっか、 アップルジュースのが良かったかぁ。」 一体この人は、 何処までが本気なのだろう? 「ゴメンなさい。 アップルジュースのが、良いです。」 私のペースまで乱れる。 「分かったよ。 すぐ持って来るから、もう泣くな。」 そう言って私の頭を優しく撫でた。 テーブルにアップルジュースを置くと、 赤城先輩は早速教科書を広げ出した。 しかも、一年生の。 「先輩も一年生の勉強するんですか?」 何処まで遅れちゃってるんですか? 「当たり前だろ。 未可子の勉強なんだから。」 「えっ!?」 「一学期の期末だったら……」 赤城先輩はそう言うなり、 めぼしい所にラインを引き出した。 確かに要点をしっかり抑えている。 「未可子って頭良いんだな。」 私の勉強の様子を見てそう言ってくれたけど、 頭が良いのは赤城先輩の方だ。 一年生の学習が全て頭に入っている。 「だてに補習受けて無いからね。」 この人って? 赤城先輩の事、 何だかもっと知りたくなっちゃいました。
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