第一話『“二つ”の招待状』

3/27
3767人が本棚に入れています
本棚に追加
/742ページ
「無茶な投球で肩を痛めたのは真琴でしょ」 真琴のすぐ後ろを同じように走っていた晶が厳しく言う。 晶の左手には包帯が巻かれていた。 親指と人差し指の付け根を脱臼。 加えて手首を骨折。 「……分かっていますよ、私が悪いんですよ」 その怪我を見ると真琴も素直になってしまう。 真琴の速球を受け続けた結果の怪我である。 男子野球部ならば夏の大会が終われば、夏の大会前に匹敵するレギュラー争いが始まり、秋季大会で結果を残すものだ。 だが、公式戦が極端に少ない――春の選抜と夏の大会しかない女子野球は正直暇だったりする。 精々練習試合をする位なものだが、 「渚先輩が引退して、投手がいなくなった今の状態じゃ、練習試合なんて、ね?」 溜め息しか出てこない。 元々部員数ギリギリでやってきた中橋学園。 設立当初、投手は真琴しかいなかった。 渚が途中で加わり二人となり、ようやく投手が揃ったのだが、 「また、真琴一人ね」 今は真琴しか投手はいない。 男子にも負けない投球を披露する真琴だが、夏の大会で重大な欠点が露呈してしまった。 『スタミナのコントロールが出来ない』 抑え投手が初回から最終回まで投げ続けているようなものだ。 極端なまでに一切の妥協を許さない性格が真琴にスタミナ配分をさせないのだ。
/742ページ

最初のコメントを投稿しよう!