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瀬名が噂をした直後、
「――へ、へぇっくしょんッ!!」
とある場所で盛大なくしゃみが辺りに響いた。
ついでに勢いよく鼻水も。
「……琴奈、汚い」
「くしゃみをするときはキチンと口元を手で押さえるのですよ」
「ちょっとマジ汚いんですけど……」
「うるさいわね、出ちゃったものは仕方ないでしょ?」
立て続けにくしゃみを非難され、流石の琴奈も少々凹む。
ここは横渕第二女子高校。
その野球部の部室だ。
夏の大会が終わり、主力だった三年生が引退。運動部は新たなチーム作りに忙しい時期だが、他の部とは違い、野球部はグラウンドではなくこの部室に集まっていた。
「夏休み明けのテストで見事に赤点の山を築いていたどこかの誰かさんたちの面倒みてんだから文句言わないで手を動かす」
「あぅ~」
「不意打ちっしょ、夏休み明けにテストなんて」
「テストは夏休み前に告知されていた。範囲も夏休みの宿題の範囲。宿題を丸写し、または理解していなかった誰かが悪い」
普段無口の芹香に言われて肩を落とす二名――チーム一小柄な順子とハイテンション娘のこのみ。
「だって、練習やら大会やらで忙しかったし――」
「その大会後に怪我人の家を訪ねてきて『お見舞いついでに宿題写させて』とか言っていたのはどこの誰だったかしら? これなら純粋にテストが解けなかった順子の方がマシだわ」
「ハッキリと馬鹿って言われた気がするのです……」
いつもは前向きの順子も今回ばかりは凹むしかなかった。
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