第一話『“二つ”の招待状』

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横渕第二女子は現在部員数6人。 三年生部員3人が引退し、人数不足に陥っていた。 部員数9人で挑んだ全国大会。 全員を違う特性の投手として鍛え、小刻みに継投し、相手のリズムを狂わせる戦略。 足りない経験は、『勝てたら付き合う』という男子のスケベ心を刺激するやり方で練習試合の相手を募り、春先から夏まで何度も試合を繰り返して積んだ。 結果、全勝。 めでたく彼女たちの貞操は守られた。 中には、試合に負けてもしつこく付きまとってくるストーカー気質の奴もいたが、そういう相手には再度試合を行ってプライドを根っこから粉々にしてやった。 そんな方針を打ち出し、チームの中心にいたのが一年生の神谷琴奈だった。 天才捕手として知られる神谷瀬名の同い年の従姉妹であり、プレイスタイルもよく似ている。 チーム作りから全て彼女が手掛けた。 かなりの荒療治だったと琴奈は語るが、結果全国大会準優勝。 決勝戦で琴奈が左手首を骨折してしまい、人数不足で不戦敗。 色々と納得いかない結果となってしまった。 本来ならば来年度に向けて練習をしたい所だが、 「春からの疲労の蓄積と大小様々な怪我、加えて赤点が二人もいたんじゃ、練習以前の話よね」 単純に人数が足りないだけではない。 皆、夏の大会での無理が怪我という形で現れている。 今は身体を休め、怪我を治すのが一番の練習だ。
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