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一切の躊躇も遠慮もなく、フルスイングで豪快に振り抜かれ、弾き返された白球。
その打球の行方を、レイカはゆっくりと振り返って確認した。
ライトの美亜が打球を追って下がり、フェンスまで数メートルというところで足を止めた。
クッションボールに備えてか、フェンスの方を向いたままだ。
結論から言ってしまうと、その打球は跳ね返って来なかった。
そのまま、フェンスを越えてしまったのだから。
「アハハハ、フェーッアハハハ!!」
不気味に笑い声をあげたまま、打った真琴はダイヤモンドをゆっくりと回る。
その様子を呆れた表情とため息を交えながら、琴奈は真琴に先行してダイヤモンドを回っていた。
「あれだけの豪速球を投げる天性のバネと強靭な体躯。パワーがあるってことは分かっていたつもりだけど、ここまでとはね……」
あまり考えたくない話だが、仮に投手としてマウンドに上がれなくなったとしても、野手として十二分にやっていけるのではないか。
そう考えてしまう強烈な一打だった。
「それでも、負けるつもりは無いけど」
先頭打者の琴奈との勝負を避けた直後、真琴に打たれた。
ソロホームラン――目先の一点を警戒した結果、二点を奪われた。
状況、流れとしては、最悪を極める。
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