プロローグ

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「夢みたいだ……。いつか来ると思ってたんだ!!」 誰もいないリビングで片手に持っていたマグカップに入っていたコーヒーが静かに波をたてていた。 新聞に目を落としながら彼の手が小刻みに震えていたせいだ。 ある朝、ここの所の習慣となっている朝刊を読む行動にでた彼が一面を見た瞬間に時間が止まったかのような感覚に襲われた。 「従来のゲームはいかにリアリティ、クォリティーを追求しようとも所詮はコントローラーを動かし画面の外から自分の分身とも言えるキャラクターを動かしてきた。」 新聞を朗読しながら彼は目をギラギラさせて「その通りだ」っとつぶやいた。 「だがしかし!!それが本当のクォリティー、リアリティと言えるのだろうか!! 我が社は11の歳月をかけついに完成させた。 その名は『ディソルグシステム』 完全自己コントロールシステムだ!!」 もう既に学校へ行かないと行けない時間にも関わらず… 「すげー…すげーよHAK社!! いつかあんたはやると思ってた!! 父さん母さん…朝からこの感動をくれたあんたらに感謝するぜ…。 そしてHAK社!! 全世界のゲームファンを代表して、この天地 光が感謝する……夢をありがとぉぉぉう!!!!」 朝から叫び声をあげている彼、 天地 光(あまち らいと) 両親は共にプログラマーとしてゲーム会社で働いている。 お互い地位はそれなりらしく、共働きということもあり、中々豪華な家に住んでいる。 そんな両親は仕事でしばらく帰れないと言い残した日、最後に付け足したのだ。 「今日からしばらくは朝刊を読め!!それはもうwktkしながら読め」 wktkとは某掲示板で昔流行った言葉らしく、いまでも父親は使っている。 ネットゲームのなかでは今でも使用されてるらしいが、あいにく今の所俺にネットゲーム歴は無い。 まぁなんにせよ、こんな父親は世間一般に言ったらオタクと分類されるのだろうが…、いや否定もできない。 噂程度だがデスクには過去に一部から熱狂を浴びた歌う機械のキャラクターフィギュアが置いてあるとか無いとか… それでもあの両親を自慢できる事もある。 それは、まず外見だろう。 イメージするオタクは今も昔も変わらない、無精髭、ボサボサの髪、メガネ……… ここまでは、仕事明けの親父はピッタリと当てはまるが、とにかく容姿だけは言える…格好いいと。
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