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少女の隣に腰掛けた少年は、紛れも無く俺だった。
が、俺であって俺ではない。屈託のない笑顔を浮かべた、汚れを知らない幼き頃の俺。
「あれはね、許婚の約束をしてるんだよ」
「いーなずけ?」
あの頃の俺は、勉強を始めたころで、少し物事を知り始めたのもあり、少女に知識を自慢げに話していた。
「そうさ。大人になったら、僕とシーラちゃんが結婚します、っていう約束をしてるんだ」
自慢げに話す小さな俺の話に耳を傾けていた小さな少女は、目をキラキラ輝かせながら小さく跳びはねていた。
そんな彼女を見て、俺はいつの間にか微笑みを浮かべていた。
――夢ってことは分かってる。
分かっているんだ。
俺自信が痛いほどに。
――それでも……
――笑っている彼女は、いつでもどんな姿でも
――可愛くて、愛おしくて
――俺を狂わせる
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