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「……ま……レン様……きてください」
窓から燦々と降り注ぐ太陽の暖かさに、気持ちよくなり眠ってしまっていたようだ。日差しは心地好い。だが、眠るには些か眩しすぎる。
それに加え、体を揺すられ、耳元で名前を呼ばれれば、起きないわけにはいかない。
「アレン様、起きてください。授業、終わりましたよ?」
俺が体を起こすと、そこには夢で会った幼き頃の俺に笑顔を向けていた少女の顔があった。しかし、あの少女よりも、少し大人びている。
当然だ。あの日から、一体何年経っているというのか。
そして、彼女は夢の少女とは別人だ。
どんなに瓜二つでも、どれだけ近い存在だとしても。
「ああ、ミーラ、すいません。いつの間にか眠ってしまったようですね……」
俺は言うが、ミーナは俺の顔を凝視したまま無反応だ。
「……僕の顔に何か付いてますか?」
顔を触ってみる。おかしなスジでも付いてしまったかな?
「……涙の跡が……」
そう言われて、慌てて目元を拭ってみる。
なるほど、確かに少し湿っている。……あの夢のせいだろうか。
「アレン様……もしや……シーラ姉様の夢を……」
ミーナはすぐに感づいたようだった。……俺が涙を流す夢なんて、それぐらいだしな。
何も言わず下を向いた俺の行動を肯定と受け取ったのか、ミーナはそれ以上、聞いては来なかった。
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