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「こんなもん。ゲームじゃん」
嘲笑うようなメッセージ。
加えて、なくなってたお宝は……。
コレクションしていた骨董品の類じゃなくて。
「う……そ……」
何も着ていないマネキン。
それからーー。
お花を失った花瓶が朝の陽に照らされている。
「お前にはコレが似合うと思ってな。コレ着て……俺んとこに来いよ。仕事で留守中に逃げんじゃねぇぞ?」
彼からのプロポーズの言葉。
この贈り物を身につけて、あと数日で帰ってくる彼の元へ。
世界中で1番幸せな女の子になるはずだった。
同じデザインは2つとない。
彼の気持ちがたくさん詰まったウエディングドレス。
仲間たちが作ってくれたブーケも特別なもの。
アイツからしたら、ただのゲームで。
ドレスもブーケもただの獲物なのかもしれない。
でも、あれは……。
コレクション品なんかじゃなかった。
「降伏したのに……お宝じゃないものも盗られるの?」
涙が頬を伝う。
どうしたら良いのか訳がわからない。
部屋の扉が開いてーー。
ゆっくり振り向くと、そこにいたのは彼だった。
重たそうな鞄を担いで、また、少し日焼けした肌。
抱きしめてくれる腕の力強さが心地好い。
「ごめんね。ドレス……守り……通せなか……った」
彼の腕の中で。
いつまでも、涙が止まらなかった。
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