絶望

3/3
前へ
/9ページ
次へ
「こんなもん。ゲームじゃん」 嘲笑うようなメッセージ。 加えて、なくなってたお宝は……。 コレクションしていた骨董品の類じゃなくて。 「う……そ……」 何も着ていないマネキン。 それからーー。 お花を失った花瓶が朝の陽に照らされている。 「お前にはコレが似合うと思ってな。コレ着て……俺んとこに来いよ。仕事で留守中に逃げんじゃねぇぞ?」 彼からのプロポーズの言葉。 この贈り物を身につけて、あと数日で帰ってくる彼の元へ。 世界中で1番幸せな女の子になるはずだった。 同じデザインは2つとない。 彼の気持ちがたくさん詰まったウエディングドレス。 仲間たちが作ってくれたブーケも特別なもの。 アイツからしたら、ただのゲームで。 ドレスもブーケもただの獲物なのかもしれない。 でも、あれは……。 コレクション品なんかじゃなかった。 「降伏したのに……お宝じゃないものも盗られるの?」 涙が頬を伝う。 どうしたら良いのか訳がわからない。 部屋の扉が開いてーー。 ゆっくり振り向くと、そこにいたのは彼だった。 重たそうな鞄を担いで、また、少し日焼けした肌。 抱きしめてくれる腕の力強さが心地好い。 「ごめんね。ドレス……守り……通せなか……った」 彼の腕の中で。 いつまでも、涙が止まらなかった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加