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もう、どこの馬鹿よ?
弱い人から盗るなんて、外道ねッ!
……………………。
人のことは言えないかな?
そして、この現実が。
自分から飛び込んだ世界なんだから。
くじけちゃダメじゃない!
だけど、でも、待って。
ここ数日。
集めたお宝を盗ってるのって……アイツ……なの?
依頼で指輪を盗り返した時の。
だって、堂々と痕跡をつけたまま。
二度三度と気がつかなかったなんて。
「狙われて……るの?」
背筋が凍るような震え。
これは。
あの時の報復なのかもしれない。
この世界では良くあることだけれど。
嫌な感じがした。
触れられたイヤラシイ手つきと目。
今、思い返せば。
獲物を捕らえるような目だった。
怖かった。
部屋中を見回す。
どこかでアイツの目が光っているようで。
「やめ……て……」
震え出す自分の身体をさする。
でも、止まらない。
次第に涙まで溢れてた。
彼が留守という不安が押し寄せてきて。
「も……やぁ……」
その日。
恐怖心に支配されて、初めてーー。
この世界に降伏の白旗を……あげた。
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