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「絵美花。静かに」
顔をしかめてみせると「大げさね」と絵美花が妖艶に笑った。
「賢いのに肝っ玉が小さいのよねえ」
「何てこと言うんだ。お前」
「大丈夫よ。あいつら同じ制服を着た警備員には微塵の疑いもかけない浅はかな集団よ。予告状が項をそうしたのね。今日のために集めすぎて把握しきれていないのよ。馬鹿だわ」
弾むように笑う絵美花に、笙はやれやれと苦笑する。
躁病の気があるのだ、この相棒は。
笙は「あの日」から、演技以外で絵美花の悲しい顔を見ていない。
それはひとつの、彼女なりのプライドなのかもしれなかったが。
「落ち合うには良い場所だな」
暗い部屋に滑るようにして入ってきた巨体の男が近づいた。
「盗られたお宝のあった隣の部屋なんてなあ。灯台もと暗しとはよく言ったものだが、お前の大胆な発想には毎回度肝を抜かれるぜ」
「豪」
筋肉質な体に赤い髪が目立つ。
用意した警官服が窮屈そうなのを見て、笙は少しおかしくなった。
(子供服のコスプレを着せてるみたいだ)
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