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昇降口から外に出ると、夕日が鮮やかなオレンジ色に辺りを染めていた。
太陽は西校舎の裏側に入り込み、校庭に大きな影を落としている。
部活動に励む生徒たちの声が飛び交い、グラウンドにはまだ活気があった。
下校時刻は過ぎているが、部活動が盛んなうちの学園では、延長届を出して遅くまで練習を続ける部活動も多いのだ。
校門に向かって歩いていると、校庭に隣接したサッカー部のグラウンドの方から、「もえちゃーん」と呼ぶ声が聞こえた。
顔を向けると、サッカーウエアに身を包み、こちらにぶんぶんと両手を手を振る姿が小さく見える。
板東先輩だ。
ぺこり、とお辞儀をしたところで、先輩のもとに勢いよくボールが飛んで行き、わたしは思わず「あ」と声を上げた。
先輩は身体をくの字にへこませ、不格好な体勢で何とかその球を避けた。
それを見た他の部員たちがグラウンドでケラケラと笑い転げている。
見ると、その球を蹴ったのはサッカー部のコーチ――うちのクラスの担任の榊(さかき)先生のようだった。
本当かどうかは分からないけれど、Jリーグからの誘いを蹴って教員になったと言うだけあって、コントロールは完璧だ。
何かを怒鳴りながら、さらにもう一球、板東先輩に向かってボールを蹴る。
たぶん練習中なのにわたしに声をかけたことを責められているのだろう。
ペコペコ謝る先輩の姿に、コートでは再び大爆笑が起きていた。
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