174657人が本棚に入れています
本棚に追加
板東先輩は、わたしの放送のファンだと言ってくれた、一番最初の人だった。
金曜日の『恋パラ』を担当するようになって、――確か、三度目の放送の時。
先輩は、放送部に突然やって来た。
そして、わたしの話し方や声がどんなに素晴らしいかについて延々と語ったかと思うと、その日はさっさと帰って行った。
先輩がサッカー部のキャプテンで、学校の中でもスター的存在だと言うことを知らなかったわたしは、『顔はカッコいいけどヘンな人が来た』程度にしか考えていなかった。
その後、板東先輩はわたしを見かける度、さっきのように優しく声をかけてくれるようになった。
そして……。
全く同じタイミングで、沙希先輩からの風当たりが強くなり始めた。
それが嫉妬によるものだと気づいたのは、ずっと後のことだ。
……けっこう、色んなこと、言われたよなあ……。
ブスとか、チビとか、ウザ女とか……。
ぶつけられた言葉をあれこれ思い出し、憂鬱になりながら歩いていると、――すぐ後ろで自転車のブレーキ音が響いた。
「萌っ」
驚いて振り向くと、万優架が二人乗り自転車の後ろから顔を覗かせていた。
「やだあ、萌。後ろからからずっと呼んでたのに」
「あ……ごめん、気付かなくて」
「しかも、歩くの遅っ。まだこんなとこにいたの?私より先に部室出て行ったのに」
自転車の前に乗っているのは、万優架の彼氏。同じクラスの雪村俊輔(ゆきむら・しゅんすけ)だった。
「萌ちゃん、今日もマジカワイイねッ」
お調子者の雪村くんはまた余計な事を言って、万優架にポカリと頭を叩かれている。
最初のコメントを投稿しよう!