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お見合いデートなんてまっぴら。
まだまだ遊びたい年頃だし、パパが紹介してくれる人は堅実で誠実で、恋人というより結婚相手だ。
私は悲しそうな声色を作って丁重にお断りすることにした。
「ごめんね、パパ。今は仕事が面白くって。
当分は帰れないかな。」
何度となく言った言い訳をよどみなく繰り返してみせると、ジョージのため息。
向こうで肩を落としたのが分かる。
「なあ、シェリービーン。
お前がやりがいを持って仕事をしてくれるのは嬉しいよ。でもそれは家族より大事なのか?」
「パパ。」
私が思わず語気を強めると、ジョージは悲しげに口をつぐんだ。
私はさすがに申し訳なくなって、わざと優しいトーンで語りかけた。
「パパ、私は恩返ししたいの。
あの財団は、私が育った家を守ってくれたから。」
私の名目上の肩書きは、とある有名な財団法人の職員だ。
この一言にジョージが言いよどむ。
私が育ったあの孤児院の話をすれば、彼が容易に踏み込めないことを知っている。
「もちろん分かっているさ。
だけど――あの孤児院には毎年、お前の学費に使うはずだったお金を寄付しているんだよ。お前がそんなに忙しく働く必要はあるのかい?」
ジョージが納得出来ないように食い下がった。
孤児院への寄付は、ジョージに引き取られて間もなく、進学する時に私がお願いした。
奨学金をとるから、私に使うはずだった学費を孤児院に、私みたいに身寄りのない子どもたちに寄付して欲しいと。
ジョージとサンドラは、私の初めてのおねだりに、なんて優しい子だと褒めてくれたのを思い出す。
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