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―サイド@アレックス―
その日はなんの変哲もない日だった。
俺はいつものように"仕事"を終えると、ベッキーに会いたくてバーへ急いだ。
今日は武器の調達やら、手配やらで、俺の気分はスッキリしない。
やっぱり、こんな仕事の醍醐味はスリルに限る。
そう、極上のスリルを味わえる、怪盗稼業。
最初は怪盗に抵抗があったけど、俺の稼ぎでスラム街の子どもたちを養ってもいるからまあいいと思う。
悪いやつからしか盗んでないし。
そうやって大事な仲間たちを守れる上、好きに暴れられる仕事なんて、俺には最高だ。
だから今日みたいな準備期間は決まって憂鬱になる。
俺は、あのアドレナリンがドバドバ出るのを体で感じるのがたまらない。
女や薬でも味わえるなんてことも言われるが、そんなんじゃダメなんだ。
ようやく着いた一件のバー。
逸る心を抑えきれずに、カラン、とドアベルを鳴らして入った。
店のマスター、ベッキーが相変わらず可愛い顔で相変わらず冷たく一瞥を寄越した。
「いらっしゃい」
ただそれだけで体が火照るのが分かる。
ベッキーが笑ってくれたら、俺は爆発しちゃうかもしれない。
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