序章

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 ある意味衝動のようなものにつき動かされ、おれはその場へ向かうことを決めて電車に乗る。  40分ほど揺られて着いたのは、よくある片田舎の駅前の風景だ。何の代わり映えもしない。  そんな味気ないコンクリートに囲まれた世界を抜けて、住宅街へと辿り着く。自宅はこの近辺だが、真っすぐ帰宅などしない。家の並びを脇に歩き、おれは住宅街の向こう、田んぼと畑の広がる世界へ突き抜ける。  さて、お目当てのホームレス集団の段ボールハウスなんだが、ここからだと正直見づらい。  空き地の方は草が生い茂っていて、同じ高さの物などスッポリ隠してしまうのだ。  段ボールハウスを見つけるべく、位置の高い場所を探してうろつく。だが、小学生の頃と違ってこの辺りも道路が整備されてしまっているから、どこも平坦だ。大して変わらない。 「入って探すか……」  独り言を漏らして歩き出し、肩の高さほどある草の森へ侵入する。ここに入るのは一体何年ぶりだろうかと干渉に浸りつつも、目を左右に動かして物を探す。  トラックもどきがここに来たのはつい昨日、いや今日か。とにかくそんなもんだ。草が倒れてるところを探せば、それの通った道も分かるし、近くに段ボールハウスがあることも確認できるはず。  
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