序章

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 そうじゃない。そうかもしれないけど、言いたいことは違う。 「そんな風に待ち受けにしてたって、彼と近付くのは難しいわよ。行動に移さないかぎりは」 「頑張ってるわよ。なるべくお話出来るようにしてるもん」  そりゃ健気なことだ。でも 「昴先輩のどこが良いの?私にはサッパリだわ」 「あんたには分からないわよ。あの一見地味で無愛想な中に、人には言えない秘密を内包しているような、ミステリアスな感じが良いのよ」  人に言えない秘密を内包してるのは、誰だって一緒だろぉが。  まぁ、ミステリアスっつうか掴み所がない印象は分かるけど……。 「はいはい。叶うといいわね、あなたの恋」 「他人事ね」 「他人事だもの」  そのまま彼女と一緒に教室まで向かい、一通りの講義を受けていたら昼休みになった。  ちゃんと講義の内容は聞いてたわよ、ノートも録ったし。 「まだ……まだ来ない」 「何やってんの?」  人を講義に呼んだくせして爆睡していたこの娘は、目の前にあるうどんではなく腕時計の針を凝視しながらブツブツ呟いていた。  
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