序章

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「じゃあ次の時間授業無いから、レポート上げてくる」 「あ、おい……。行っちまった」  結局、彼は蘭の話を適当に相槌を打つくらいにしか聞かずさっさと行ってしまった。 「あんなにお話できた。あはははっ」 「幸せそうだね」 「バカな娘ですから」  あれで上手くいったとでも思っているんだろぉか。ゲームの中のベタな展開と程遠いのは仕方ないけど、いくら何でも酷過ぎる。 「じゃあ、俺もこの辺で。迷惑かけてすまなかったね」 「いえ、そんなことは。でも、何でこんな風に手伝ってるんですか?」  ちょっと地雷かな?とは思ったけど聞いてみた。一瞬表情を変えた海藤先輩だったけど、すぐこう言った。 「幸助が誰かと付き合ったら面白そうだからさ」  おいおい、いいのかそんな理由で……。  私が頭を抱えている光景など知らない海藤先輩は、スタスタと出口へ行ってしまった。 「ねぇ、里実」 「何よ?」 「私たち、上手くいくよね」 「何を根拠にそんな妄言を」  ダメだ。蘭は相変わらずのバカで、自分の置かれている状況を全く理解出来てないわ。  きっと、恋のキューピッドはもうコイツを見放しているのね。  
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