序章

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♂♂♂ 「さて」  授業の無い時間を縫って課題のレポートを書き上げたわけだが、ずっと心に引っ掛かる案件があった。  それは昨日、深夜まで続いてしまったバイトの帰りに見たあの変な光景だ。あれは一体何だったんだろうか? 「あ、昴先輩」  いきなり声をかけられて肩が跳ねそうだったが、何とか抑える。そんでもって振り返ると、さっき斜め前の席で食事をしていた後輩の女の子が立っていた。 「ああ、さっきの……」 「小笠原 里実(おがさわら さとみ)と言います」 「そう。さっきはケンの我が儘であぁなっちゃって、ゴメンね」  あだ名で言っちゃったけど、その辺は分かっていただけたようだ。そんな顔してる。でも 「あの、あれは海藤先輩の我が儘なんかじゃないです。それは本当です」  なんて言ってきた。  何か良く分からないけど、ケンを擁護するってことは、あれは奴1人の暴走じゃないってことか。 「そうなのか?」 「はい。涙目になるまで先輩が疑っていたので、これだけは誤解させないでおこうと」 「はぁ」  
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