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「……ん! じいちゃん!」
「ん……」
「ホッ……良かった、目が覚めた。 もうじいちゃん! 悪い夢でも見た? 随分魘されてたぞ?」
「真……あれ、ワシ寝てた?」
大きく溜息を吐いている真を横に目を擦る。
カサカサとした感触に徐々に現実味が増してきた。
いつの間にか蝉の鳴き声が静かになっていて窓を見ると外は暗くなっていた。
一瞬だけさっきの夢にまた戻った気がして息を呑む。
「ほら起きて! 母さん達もとっくに帰ってきて晩御飯作ってくれてるよ!」
「あ、あぁそうか」
「? じいちゃんホントに大丈夫? 今日一緒に寝ようか?」
「ありがとな。 じゃあ健児君も入れて三人で寝るか」
「うん! 一緒に怪談話しよーな! あ、でもじいちゃんまた変な夢見る?」
「はっは! じいちゃんの怪談を聞いたら逆に真が寝れるか心配だな~?」
「! 別に怖くないし! 先行くね!」
バタバタと足音を立てて真が居間に向かう。
きっとさっきのことを話したんだろう、暫くして沸き起こる笑い声に口を緩めた。
「よい、しょ」
ゆっくりと立ち上がる。
あー膝やっぱり痛いな。 膝サポーター通販で買うべきか。
……いや、まだワシは現役だ。 サポーターはずっといらん。
頭を振って生涯現役を宣言すると、白い封筒に気づいた。
そういえばまだ見てなかったな。
毎回書いている内容は似たようなことだが一応と思い封筒を開ける。
入っていたのは紙が二枚と一枚の……。
「――あぁ、だから夢に出てきたのか」
とても懐かしい、学生時代の俺と月沼が笑い合う写真が入っていた。
綺麗な顔をくしゃりとさせて笑っている月沼に口の端を上げると封筒に入れ元の場所に戻す。
「じーちゃーーん!」
「おお、今行く!」
結局何を伝えたかったのか分からないし、アレが事実かどうかも分からない。
けど代わりに俺が最期の言葉に応えよう。
「さよなら、じゃないだろ。 またな、月沼」
『さよならだ。 早瀬』
そう最期に言ったお前に、また会えるように俺はそう言った。
fin.
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