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**************アクアは学校前の桜並木を一人で走っていた。
この季節にだけ他の物を圧倒し、 逞しく空に向かって枝葉を伸ばしていく桜の姿がたまらない。
寮を余裕をもって出たはずなのだが、桜に見入ってしまったために今の状況下に置かれていた。
なんとか間に合い、校門を潜ることができた。荒くなった息を整えるために深呼吸をしようとした時だった。
桜並木の方から何かがもの凄い勢いで向かって来るのを感じた。
その気配を感じたときに、母親譲りの金色の髪が突風に吹かれて浮き上がった。
おもわず髪を押さえて下を向いてしまう。
風が止むと先程に感じた気配が消えているのに気がついた。
(今のはいったい……)
顔を上げると、前にはさっきまではいなかった男が安堵の表情を浮かべて立っていた。
髪の色は黒く、長くも短くもない。顔は整っていてなかなかの美形であった。こんな人がいれば女性なら気付かないはずはないと納得をした表情を浮かべて頷きながら勝手に確信してしまう。
(まさかな……)
疑いの目を彼に向けた。
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