Ⅰ、聖ラクエスタ学園

5/8
前へ
/56ページ
次へ
************** 「ふぅ~」 なんとか時間内に辿り着いたと安堵していると、背後から視線を感じたので振り返ってみた。 すると、凄い形相で睨んでいる金髪の女性がリンスの視界に入った。 「えっ!」 彼女と目があってしまい、目をはずせるにはずせない空気が二人の間に流れ込んできた。 彼女にとっては予想外だったのか、目を丸くしたままきょとんとした表情を浮かばせている。 ((少しやりすぎたかも)) リンスが焦った顔をすると、彼女は首を曲げ、顎に綺麗な手を添えて怪しげな視線を向ける。 ((誰か助けくれぇ~!)) 心の中で叫ぶと、それが聞こえたのか、背後から猛烈なチョップが飛んできた。 殴られたら振り返るという条件反射を行うと、これまた凄い形相?というより完全に怒っていらっしゃる幼馴染みのシェーナの姿があった。 「痛いぞ。何をするんだ?」 「リン!こんなぎりぎりの時間まで何をしてたの!?」 「俺から先に質問をしたんだから、俺の質問に対しての回答が第一優先事項なんじゃないのか?それがマナーだと俺は思うぞ。うんうん」 「屁理屈言うな!だいたい質問できる立場だと思ってるの?今まで何してたの?」 耳元で怒鳴られ耳がじんじんする。それを特に不快だとかは思わず、問いに慌てて答えようと口を開きかけるが、いきなり耳をつままれて遮られてしまった。 「式まで時間がないんだから早く行くよ」 「痛い、痛い! 自分の足で歩けるからまず離せ」 リンスの叫びは無視され、シェーナは強引に耳を引っ張り、リンスを引きずる形となって歩き続ける。 引きずられている最中に、再び金髪の彼女と目があった。 ((あの目には俺はどう映っているのだろう?さぞ惨めに映っていることだろうな)) シェーナに引きずられていき、彼女の姿は見えなくなっていった。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加