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「ふぅ~」
なんとか時間内に辿り着いたと安堵していると、背後から視線を感じたので振り返ってみた。
すると、凄い形相で睨んでいる金髪の女性がリンスの視界に入った。
「えっ!」
彼女と目があってしまい、目をはずせるにはずせない空気が二人の間に流れ込んできた。
彼女にとっては予想外だったのか、目を丸くしたままきょとんとした表情を浮かばせている。
((少しやりすぎたかも))
リンスが焦った顔をすると、彼女は首を曲げ、顎に綺麗な手を添えて怪しげな視線を向ける。
((誰か助けくれぇ~!))
心の中で叫ぶと、それが聞こえたのか、背後から猛烈なチョップが飛んできた。
殴られたら振り返るという条件反射を行うと、これまた凄い形相?というより完全に怒っていらっしゃる幼馴染みのシェーナの姿があった。
「痛いぞ。何をするんだ?」
「リン!こんなぎりぎりの時間まで何をしてたの!?」
「俺から先に質問をしたんだから、俺の質問に対しての回答が第一優先事項なんじゃないのか?それがマナーだと俺は思うぞ。うんうん」
「屁理屈言うな!だいたい質問できる立場だと思ってるの?今まで何してたの?」
耳元で怒鳴られ耳がじんじんする。それを特に不快だとかは思わず、問いに慌てて答えようと口を開きかけるが、いきなり耳をつままれて遮られてしまった。
「式まで時間がないんだから早く行くよ」
「痛い、痛い! 自分の足で歩けるからまず離せ」
リンスの叫びは無視され、シェーナは強引に耳を引っ張り、リンスを引きずる形となって歩き続ける。
引きずられている最中に、再び金髪の彼女と目があった。
((あの目には俺はどう映っているのだろう?さぞ惨めに映っていることだろうな))
シェーナに引きずられていき、彼女の姿は見えなくなっていった。
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