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† 桃太郎side
明け方に部屋に戻った。
無性に腹が立ち、元気おじさんを置いてきぼりにした。
おじさんは、完全に元に戻った筈だ。
何でか判らないけど、自信があった。
根拠はある。
それが俺の力なんだと、俺の、“宗寿”の。
不思議な感覚に戸惑う。
俺は、“桃太郎”だけど、“宗寿”でもあった。
突然、ゴリ。と手の中の珠が音を立てた。考えている内に指を動かしていたらしい。
あの時、おじさんから抜き出した“朱色の血珠”を持ち帰って居た。
珠は十粒あった。
これを体内に取り込むと鬼に成るんだとおじさんは言っていた。
蛇達が食べた時に……。
ガーガーと、残念なイビキをかいて眠る不二丸を見る。
これを不二丸が食べたら、鬼に成るのか?
ふと過った考えに眉を潜める。
―――……誰かを愛したい。
宗寿はそう考えていた。
それはずっと、まるで恋するみたいに焦がれていた。
不二丸は、俺を好きだと言った……。
そこで、端と気付く。
俺は、羅刹が無理なら不二丸を。と考えた?
違う。“俺”じゃない。
俺だけど、俺じゃない。“宗寿”の考えだ。
それは違うと俺の中の宗寿を諭す。
好かれてるから好きになるのか?
自問自答する。
解らない。
だって、今の今まで……。俺は、恋をした事がなかったんだと気付いた。
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