鬼の子ども

2/45
187人が本棚に入れています
本棚に追加
/191ページ
  ジリジリジリ―――!! けたたましい音に目覚めて、目に飛び込んだ時間に驚いた。 とっくに学校が始まってる時間だ! なのに何で母さんは起こしてくんなかったんだよ! ブツブツ言いながら制服に手を通す。 慌て廊下へ出た所で母さんにぶつかりそうになった。 「きゃっ!?」 って、可愛らしい悲鳴を上げた母さんが、普通の家よりも高造りの天井へ飛び、長い黒髪をなびかせ一回りして、俺の前へ降りて来た。 「まったく。落ち着きのない子ね!」 キッと睨まれて、いつもの通り、素直に謝る。 「ごめんなさい」 「はい。よく出来ました。て、桃ちゃん。 制服着てどこ行くつもり?」 きょとんとした母さんの顔は、実年齢よりかなり若々しくて、下手したら本気で俺の姉だか妹に間違えられる。 「学校……「なら、卒業したでしょう?」 俺の言葉を遮る様に母さんが言った。 あれ? そっか。 昨日卒業式だった。 習慣って恐ろしい。 「そうね。私が起こさないと起きないのも習慣の一つね」 母さんは、笑って俺の頬を撫でた。  
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!