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ジリジリジリ―――!!
けたたましい音に目覚めて、目に飛び込んだ時間に驚いた。
とっくに学校が始まってる時間だ!
なのに何で母さんは起こしてくんなかったんだよ!
ブツブツ言いながら制服に手を通す。
慌て廊下へ出た所で母さんにぶつかりそうになった。
「きゃっ!?」
って、可愛らしい悲鳴を上げた母さんが、普通の家よりも高造りの天井へ飛び、長い黒髪をなびかせ一回りして、俺の前へ降りて来た。
「まったく。落ち着きのない子ね!」
キッと睨まれて、いつもの通り、素直に謝る。
「ごめんなさい」
「はい。よく出来ました。て、桃ちゃん。
制服着てどこ行くつもり?」
きょとんとした母さんの顔は、実年齢よりかなり若々しくて、下手したら本気で俺の姉だか妹に間違えられる。
「学校……「なら、卒業したでしょう?」
俺の言葉を遮る様に母さんが言った。
あれ?
そっか。
昨日卒業式だった。
習慣って恐ろしい。
「そうね。私が起こさないと起きないのも習慣の一つね」
母さんは、笑って俺の頬を撫でた。
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