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「止めてくれよ~。今日あいつ来んだから」
「あらあら。こう見えて母さん口が固いって知ってるでしょう?」
「……」
そうだ。勝手にココロは読むけど内緒にしたい事は確かに誰にも言わない。
母さんが口を閉じて、指先でチャックする真似をする。
「お願いだよ?」
再度言い、母さんが頷くのを見て安堵の溜め息を吐く。
「さ。母さんも忙しいのよ。朝ご飯食べちゃってくれる?」
言われるままに、食堂に足を進めた。
▲
「あれ?」
テーブルに付いて新聞を広げてトーストをかじっている父さんが居た。
こんな時間に居るなんて珍しいな。
「“おはよう”が先だろう。桃太郎?」
ちらりとこちらに視線を寄越して言われる。
「おはよう。父さん」
自分の席へ着くと、父さんが新聞を畳む。
「ふむ。それで?」
「何?」
「お前はこれからどうしたいんだ?」
それは、俺が聞きたい事だよ。
「大学に行かなかったし」
「父さん。正確には行けなかった。だよ」
そんで今日から取りあえずプーな生活の始まり。
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