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「まあ、急ぐ事はない……あれだ、何ならうちを手伝うとかな、色々ある」
父さんは一つ咳払いすると、珈琲を飲んだ。
「うん。遊んどくつもりはないからね」
トーストにバターを塗る。
「その心掛けがあるなら良い」
言って立ち上がると、行って来る。と俺の背後に居た母さんを見て驚いた。
「樹利亜!?」
「母さん?」
俺が振り向くより先に父さんが傍に行って居た。
母さんはその場に力なくしゃがみ込んでいて、父さんが目にも止まらぬ早さで抱える。
「元気の所に行って来る。桃太郎、すまんが後は頼む」
頭を下げた父さんは、目を瞑り、廊下に続くドアを開けた。
鈍い光と共に現れたドアの向こう側は、いつもとは違う風景。
草原広がる屋外。
現実では有り得ない事。
だけど、俺んちでは当たり前で、これが現実。
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