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父さんと母さんはドアの向こう側に消えた。
母さんを心配しながらもそれが一番安心だと判っていたから無言で見送った。
ドアが静かに閉まる。
「大丈夫かな?」
心配はないと判ってるけどいつも元気な母さんが倒れるなんて信じられない。
呆然と、味の判らなくなったトーストを呑み込む。
「大丈夫だ。きっと」
自分を安心させたくて声に出す。
元気おじさんならどんな病気でも治せるんだから。
そんな不思議な力を持ってるのが俺達の一族。
鬼の血を受け継ぐ一族。
でも、その能力も目醒めなければ意味がない。
自分の額に手を置いて、髪に隠れた“角瘤”を触る。
俺に鬼の能力が目醒める気配がない。
何故か解らないけど焦る気持ちとか、未だにそう言った事が信じられない気持ちとかが胸の中でしこりを作って居て、未来を夢見る歩みの足を留めて居た。
自分の“存在”にどんな意味があるのか。何て、考えたり。
色々考えてパニックを起こしそうだった。
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