鬼の事情

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  「宗寿は、幸せだった。愛されて育った。だけど、愛する事を知らなかった」                .. だから、今の元気おじさんをも“宗寿”は羨んでる。   自分を見失う程に愛する人が居た。 そして、見返りなく、体当たりの愛でおじさんを救った羅刹が居る。   それが、どんなに恵まれているか。   きゅうっ と、胸が締め付けられる。 ..... 悪鬼に成るなんて、我が儘な事だ。   我が儘な……。     ..  「俺は、お前を見捨てた。空羅寿を殺し、羅刹を……苦しめている。        ...... そして、双子を無視している」   双子、故意に。居て居ない存在にしている。 なのに名前を呼んで、まるで使役者の様に振る舞い、親として双子を愛する事を拒んでいる。   それを全て、“悪鬼”のせいにして。   それは、我が儘でしかない。   「元気おじさん。貴方は逃げているだけだ」   自分の冷静さに驚く。 俺は今、自分の前世を知った。 なのに、ココロは穏やかだ。 あれだけ悩んでいた事柄も、全ては自分で選んだ道筋だった。   母さんの元に誕生したのは、母さんが、育ての親だったから。 .... 鬼に成る事を選んだのも、それは前世から望んで居たから。  
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