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駅前の大きな木には、色とりどりのネオンが施され、点滅しては人々を立ち止まらせていた。テッペンには大きな星が飾られていて、ひときわ目立っている。他の街路樹にもネオンが飾られ、ムードは一気にクリスマスだ。
私はこの季節が大嫌いだった。
だって…あの時のことを思い出してしまうから…。
寒い冬の日…クリスマスも近付いた頃…。
デートの帰り、この駅前のビック・ツリーの前で…彼は突然、立ち止まって…こう言ったんだ…
『ゴメン…もう…付き合えない…』
って…
『え…?』
彼のすまなそうな声に顔をあげる。3年間、付き合っていた彼は…唇をギュッと噛んだまま、動かない。
『親と決めた人と、結婚することになったんだ…』
5歳年上の彼…。彼の実家は、小さな料理店。そこを訪れた企業のお嬢様が彼に一目惚れし、結婚すれば店を大きくしてやると言われたそうだ…。
『ヒドイッ…私は!?私の気持ちはどうなるの!?』
思わず、言葉に力が入る。
彼らの将来のために仕方ないかな…という気もあった。でも、付き合ってたのは私なんだし…私を選んでくれるだろう、という気持ちもあったのも事実。でも…彼は…“イマ”よりも“ミライ”を見込んで選んだ…。お嬢様は…性格もよさそうだし…女の私から見てもキレイだ。反対する理由もない。でも…。私の気持ちは一体どうなってしまうの!?
私は思わず、彼にあたってしまう。やりきれない思いで、涙が次々に溢れ出てくる。止めようとしても、涙はなかなか思い通りにいかない……
『ゴメン…真実…』
ショックを隠しきれない彼も、ただ…それしか言えずにいた…。
私はこの時、サンタさんはいないんだ…平等にプレゼントはもらえないんだ…って…そう思った…
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