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(塚原)
「どないした。龍聖」
龍聖の拳の下にある塚原の表情は不敵に笑っている。
(塚原)
「えらい迷っとるやないか。人を殺す時は迷たらあかんのとちゃうかったんか」
龍聖は一度拳を引いた。
(龍聖)
「やかましい!!」
再び、つき出される龍聖の拳を塚原は右掌で受け止めた。そして左拳を龍聖の鳩尾に突き上げる。
「うぅぅ」と龍聖は唸りながら前屈みに体を折った。塚原の右拳が龍聖の顎を捕らえた。龍聖が後ろに倒れこむ。
「龍聖さん!!」と叫び手下達が駆け寄ろうとする。
(龍聖)
「来るな!!じっとしとれ!!」
言って龍聖は上半身を起こした。
(龍聖)
「……夢……希望……そんなもんヘドが出るわ!!」
龍聖の口から血の混じった唾が吐き捨てられた。茶色い瞳には幾重もの赤い筋が目立つ。
(龍聖)
「塚原ぁ。お前だけは絶対に俺がぶち殺したる」
龍聖の様子は明らかに変わっていた。表情から余裕は消え、般若を思わす狂気の形相になっている。
床に落ちていたナイフを拾い上げ龍聖が立ち上がった。
(龍聖)
「殺したる……殺したるぞ塚原ぁぁぁ!!」
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