第四話~孤狼の哀歌(塚原一平編)

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 店の引き戸がまた開く。立っているのは目に涙を溜めた男、相田だ。  塚原は舌打ちをした。相田は声を震わせて言った。 (相田) 「一平が真面目に……うぅぅ……一平が」 (塚原) 「うるさいんじゃオッサン!!毎回店に来る度に泣くな!!何回目やねん!!」 (李) 「こら塚原!!お客様になんて言葉いうか!!」  李の怒声で塚原は黙りこんだ。  午後3時、一旦夜まで閉店となり、塚原達は休憩となる。  店の2階で塚原と三浦はテレビを見ながら賄い食のラーメンをすすっていた。  テレビの中でニュースキャスターが神妙な面持ちでニュースを読んでいる。 (えー、続いてのニュースです。昨夜未明に和歌山県の山林で発見された白骨死体は検死の結果、神戸市在住の神田龍聖さん23歳と判明しました)  三浦の口から麺が吹き出す。塚原もテレビを凝視した。 (和歌山県警と兵庫県警は殺人遺体遺棄事件の捜査本部を設け) 「龍聖……」と塚原は呟きながら複雑な思いが込み上げた。  そんな塚原の気持ちを察したように三浦が明るい声を出す。 (三浦) 「なぁ兄貴。今週末paceこしもとでプットロールタワーの単独ライブあるねんけど、行くやろ?」
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