第四話~孤狼の哀歌(塚原一平編)

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 塚原は笑顔で頷いた。二人は封筒の口を開き二つおりの紙を取り出した。 (三浦) 「ほな行くでぇ……せえーの」  三浦の声で二人は同時に紙を開く。三浦が天高く腕を突き上げた。 (三浦) 「やったぁぁぁ!!」  大喜びする三浦の横で塚原は小さく拳を握りガッツポーズした。  二人に届いた手紙の文面はこうだった。 先日第22回越本芸能学院面接試験を受けて頂いた結果、貴方は合格となりました事をご通知致します (三浦) 「やったで!兄貴!!」  はしゃぎまくる三浦。この時、二人はまさかコンビを解散しなければいけない日がくるなんて、全く想像もしていなかった。 ―――1999年4月中旬――  二人の芸人としての道は始まっていた。  塚原は新鮮で充実した日々を送っていた。  ここはすべてにおいて熱い世界。  剥き出しの闘争心をぶつけてくる同期の芸人達。けっして殴りあいでは得られない爽やかな刺激を塚原は感じていた。  そんな中、「その日」は突然やってきた。  大阪の喫茶店でコーヒーを啜る塚原。向かいの椅子には黒い喪服姿の三浦が座っている。
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