第一話~ピンクウサギができるまで(キラリ編)

3/58
110人が本棚に入れています
本棚に追加
/279ページ
(野口) 「だいたいなぁ……あれ、なんだっけ?……チッ!セリフ忘れたぁ、ハァーア!トンじまーった!…」 セリフを忘れネタ中にも関わらず緊張の糸が切れたかのようにため息を漏らす野口。 (佐藤) 「ワタシハ…ウチュウ人ダ」 やる気を無くした野口とは正反対に自分の胸を手刀で叩きながら必死でネタを続行しようとする佐藤。 (野口) 「佐藤…もういじゃねえか…どうせまた不合格だよ」 野口は右手で佐藤を軽く押して冷めた口調でそう吐き捨てた。 野口の右手首にはダイヤの入った時計が電光に反射してキラキラ光を放っている。 (佐藤) 「ワタシハ…ウチュウ人ダーー!!」 まだ漫才を成立させようとする佐藤。 佐藤は体を大きくクネらせたり、頭を大きく振り回したりしている。 佐藤の黒髪センター分けの頭はボサボサに乱れている。 色白で真面目、優しそうだけが取り柄の平凡な顔はほんのりピンク色の紅潮が見える。 全身から必死さを滲み出す佐藤を野口はいらつきながら一瞥して、ヘアーワックスでツンツンに立たせた自分の頭を軽く触りハァーっと溜息をついた。
/279ページ

最初のコメントを投稿しよう!