届かない手

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「リー・・・シャ・・・」 怯えたように、確かめるようにそっと名前を呼ぶ。しかし、その少女は反応をしめすことなくただ無表情のままこちらを見ていた。 そんなリーシャを見た途端、レイの表情が一瞬で絶望に変わる。その様子を見ていたティアが悲しそうに表情を歪めレイにしがみついたまま目をそらした。 自分たちを見ても表情1つ変えない、名前を呼んでも反応しない。それはまるで・・・ 「おいっ・・・どうなってんだよ」 怒りともとれるような低い声でライトが尋ねる。 「魔の森の中・・・そこにリーシャさんはいたんだ。だけど2年前のあの日に使った魔法の影響で、今・・・」 ティアは短く、リーシャとの再会の説明をする。そして、一番大事な部分を言いにくそうに言葉を区切る 「リーシャさんの人格は封印されてるの・・・」 「人格を・・・封印・・・?」 レイは聞き慣れない、意味のわからない言葉を自ら口にし、理解しようとするがすんなりと理解ができない。 「簡単に言ってしまえば・・・あの人はみんなが知ってるリーシャさんじゃない。自分の事もみんなの事も何も知らない・・・何の思い出も知識も持たない、ただの人形のようなもの・・・」 頭が真っ白になる。ティアが説明している内容の意味が文章としては理解できるが心がそれを拒絶する。 目の前にいるのは、まぎれもなくリーシャである。でも、ティアが言う通り目の前にいるのが『リーシャ』でないという事もはっきるとわかる。
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