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中から出てきたのは男だった。
荒涼とした大地に這い出すと、大きく伸びをする。
太陽が照らさないこの地は酷く寒い。男の冷たい吐息がこの広い、静寂な地に響く。
暗闇の中を男は歩き出す。光などは必要もない。眩しいまでの星明かりが彼の道行く先を案内してくれるからだ。
彼はただ、歩く。
空を見上げれば一面の美しい星。だけども気にしない。
──この荒れた世界に彼一人。
だけども彼は気にしない。
彼には仕事があった。その仕事をこなさない事には何も始まらない。
(……ついてない)
凍える体をコートで覆いながら一人ごちる。
そして、男は立ち止まった。
その先には……。
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