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プロローグ
雨の中に立ち尽くしたまま、私は黒く重たい空を見上げていた。
どんなに雨が流そうと、この心の汚れが消えることは無い。
私はあの雨雲の様に、黒く汚れているのだ。
どれ位そうしていただろう。
長い黒髪に雨が伝い、それを無造作にかきあげた時、公園の向かい側に車が停まったのが見えた。
慌ててパーカーのフードを被り、再度走り出す。
雨をよく吸ったそれはヒヤリと重く、私の意識を現実へと戻した。
後ろは振り返らない。
車が停まったのとは反対側の出入口から公園を飛び出し、ひたすら走る。
なるべく車が通れない細い道を進み、息が続かなくなると隠れて休む。
それを何度も繰り返していた。
風景は、自分がかなり遠くまで逃げてきた事を教えてくれていた。
知らない町名に知らない街並み。
このまま、誰も知らない所に行きたかった。
フラフラの体でがむしゃらに走った。
だから、まさか曲がり角の向こう側に人が居るとは思いもせず……。
「きゃあっ!」
ドシャッ。
と、見事に転ぶ結果となってしまった。
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