猫仔猫

1/28
111人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ

猫仔猫

雨の中ぶつかった少女は、とても冷たい目をしていた。 傘もささず一心不乱に走っていたことや、車から隠れていたことから家出だと察しがついた。 自分にもそういう経験はある。 だから、走り去ろうとした少女に送っていこうと言ったのは社交辞令。 向こうも断ることが目に見えていた。 しかし、咄嗟に掴んだ腕から、その冷えた体温が伝わる。 一体いつから雨の中を? 疑問が過った。 そしてとった行動があれ。 我ながら強引だったと思う。 「使ったタオルは黄色いカゴへ入れて下さい。 乾燥機は使い方分かりますか?」 そう言ってタオルとジャージを手渡された。 どうしようかと少し眉間にシワを寄せれば、 「あ、大丈夫。 ジャージ新品ですから」と、付け足された。 「そういう問題じゃないのに……」 姫島が居なくなった後、脱衣場でそう呟く。 結局あの後、家へ連絡されるのを避ける為に、服を乾かすことと送ることを承諾した。 「送るったって帰るとこ無いのに」 男の顔が脳裏に浮かぶ。 ハッとして強く頭を振った。 アイツの所になんて帰らないからっ!! .
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!