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猫仔猫
雨の中ぶつかった少女は、とても冷たい目をしていた。
傘もささず一心不乱に走っていたことや、車から隠れていたことから家出だと察しがついた。
自分にもそういう経験はある。
だから、走り去ろうとした少女に送っていこうと言ったのは社交辞令。
向こうも断ることが目に見えていた。
しかし、咄嗟に掴んだ腕から、その冷えた体温が伝わる。
一体いつから雨の中を?
疑問が過った。
そしてとった行動があれ。
我ながら強引だったと思う。
「使ったタオルは黄色いカゴへ入れて下さい。 乾燥機は使い方分かりますか?」
そう言ってタオルとジャージを手渡された。
どうしようかと少し眉間にシワを寄せれば、
「あ、大丈夫。 ジャージ新品ですから」と、付け足された。
「そういう問題じゃないのに……」
姫島が居なくなった後、脱衣場でそう呟く。
結局あの後、家へ連絡されるのを避ける為に、服を乾かすことと送ることを承諾した。
「送るったって帰るとこ無いのに」
男の顔が脳裏に浮かぶ。
ハッとして強く頭を振った。
アイツの所になんて帰らないからっ!!
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