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「駐車場で雨宿りしていたんでしょう。 この雨ですから。
悪いことをしたと思って追いかけました。 だけど、どこか細い路地へ入って行った様で見付かりませんでした。
その時です、君が僕にぶつかったのは」
あの時、姫島が屈んでいたのは、猫を探していたからだったのかと私は納得した。
「猫の代わりに雨宿りしていくといいですよ。
丁度、逃げた野良猫はあなたの様な黒猫でした」
「いえ、そんな」
「心配しなくても、子供に興味ありませんから。 君が僕を襲わないと誓ってくれるのなら、雨がやむまで猫一匹増えるくらい構いませんよ」
「私は猫扱いですか……」
この男大丈夫だろうか? と思いながらも、その提案が魅力的なのは言うまでもない。
きっと、親戚、友人の家は張られている。
だからがむしゃらに逃げてきた訳だけれど。
「姫島さんはペットにちゃんとご飯食べさせる人?」
その問に姫島は笑顔をみせた。
「良ければデザートもお付けします」
外は雨。
天気予報が告げる。
10月のこの雨は長引くだろう、と。
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